Cedep 発達保育実践政策学センター

第6回 発達基礎科学セミナー

日時
2017年4月17日 (月) 15:00〜16:30
場所
東京大学工学部 12号館408号室
講演

「免疫学的自己と制御性T細胞」

堀 昌平(東京大学大学院薬学系研究科)

「腸内細菌と宿主恒常性維持」

中島 啓(東京大学大学院薬学系研究科)

参加者の声

本日は薬学部からお二人の先生方にお話をいただいた。 まず最初にご講演いただいたのは堀先生で、主に免疫システムが自分を自分と判別できるのはなぜか、ということがテーマになっていたように思う。このような現象を考えるにあたって多くの示唆を与えるのは”ウズラの羽を持ったニワトリ”であり、それは発生初期にウズラの”胸腺”を羽と一緒にニワトリに移植して生まれるものであった。単純に羽を移植しただけではニワトリは成長するにつれてウズラの羽を拒絶するにもかかわらず、T細胞(免疫機能の司令塔)の成熟に関わる胸腺を一緒に移植すれば他人の細胞に対して拒絶反応が起きなくなるらしい。この現象をめぐって様々な仮説が提唱されてきたが、堀先生が明らかにしたのはT細胞の中には胸腺で制御性T細胞と呼ばれるものに分化するものがあり、これが自分の細胞を攻撃するT細胞を抑制するということである。これによって、ウズラの胸腺を移植したニワトリはウズラの細胞を攻撃する細胞も制御性T細胞の抑制を受けて不活性になる。つまり免疫学的には「自己」は発生過程で能動的に学習されるものであると言え、心理学的な意味での「自己」の発達過程にも大いに示唆を与えるものであると思った。

次にご講演いただいたのは中島先生で腸内細菌の研究をなさっている先生だ。つい最近まではヒトにとって不要である、または害であると考えれられてきた腸内細菌であったが、腸内細菌の中には宿主であるヒトと共生してヒトに良い影響を与えるものもあることが次第に明らかになっている。特にバクテロイデスとよばれる菌は食物繊維などを栄養源として代謝産物として短鎖脂肪酸を放出することで、宿主の脂肪の蓄積を抑えたりすることで肥満などへの効果が期待されている。

とはいえ、成人の腸内環境を変えるのは難しく、腸内環境を整えるには幼少期の食事や体験が重要であるとのことだったので、保育の観点からも腸内細菌の研究動向は注意する価値のある情報を多分に含んでいると感じた。

腸内細菌の話は保育と意外と関わりが深いことに驚きました。また、免疫の話は特に哲学的なテーマにもなっている気がして面白かったです。

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