「からだ」は生きる世界を獲得する出発点
田附 俊一(同志社大学スポーツ健康科学部)
大学で教育学を学んだ私は、子どもの教育に関心があったものの、自身が陸上競技のやり投げの選手であったため、競技力向上のための「コツ」や「カン」が関心事となり、その研究分野である「スポーツ運動学(Bewegungslehre des Sports)」を専門としています。現在はその対象が子どもにも広がり、「人が社会で生きるために必要な身体能力」としての「コツ」や「カン」も研究対象にしています。
言語が未発達な子どもは、五感(第六感含む)が世界との接点であり、五感を通した経験により、生きるための「コツ」や「カン」(術:すべ、技能)を学習し、成長します。
「コツ」や「カン」を教えることはできず、自得するしかありません。私たち大人はこの自得を促す環境を用意するしかできず、それこそが、大人の役割であると考えます。
人が社会で生きていくために必要な身体能力を、Koselは①注意の方向・位置感覚能力、②反応能力、③バランス能力、④運動リズムの能力、⑤力量発揮能力としています。鬼ごっこは、この5つの運動能力を駆使し、また、それらを育む遊びです。鬼が追う、それ以外が逃げる遊びにより、他者と自分の距離や他者の移動の方向と速度を観察して、自身の動くタイミングと方向を判断して動き(注意の方向・位置感覚能力、反応能力、力量発揮能力)、時にはフェイントをし(運動リズムの能力)、転ばないように(バランス能力)ストップ&ゴーを繰り返します。つまり、自身の動きの「コツ」を用いて他者との関係の「カン」を働かせています。この能力は、例えば、スクランブル交差点で他者とぶつからないように、信号が変わるまでに道路を渡り切る際に使われています。
10年以上、運動遊びの観点から幼稚園に関わっており、その教育方針によって子どもの運動能力の変化に違いがあることに気づきつつも、それは心象的であり、それをわかりやすく示すことができないかと考えてきました。今回のセミナーでは、途上の研究ではありますが、ウェアラブルセンサーをつけてもらった鬼ごっこの変化について、教育方針の大きく異なる園での横断的な変化の違いについてご報告したいと思います。
幼稚園や小学校の先生から、「最近、友達とぶつかる子どもが増えている。どうしたものか?」という質問をいただいて久しくなります。
「できるだけ教えない」理念のドイツのハイデルベルク発祥のボール遊び(Ballschule)もご紹介し、皆さんと共に、子ども、とりわけ幼児にとって、運動遊びを含む望ましい経験について考える時間になれば幸いです。
なお、当日は、著作権や肖像権の関係から、スライドの録画をお断りいたします。後日、それらに抵触しないスライドをご提供する予定です。ご理解ください。

