Cedep 発達保育実践政策学センター

第7回発達基礎科学セミナー

日時
2018年4月16日 (月) 13:30〜15:00
場所
東京大学教育学部 地下008号室
講演

「乳児の音遊び行動の起源を探る〜身体運動可聴化技術による試み〜」

藤井 進也(慶應義塾大学環境情報学部), 奥 絢介(慶応義塾大学環境情報学部), 新屋 裕太(東京大学大学院教育学研究科)

慶應義塾大学環境情報学部の音楽神経科学の藤井進也専任講師に、ヒトと音楽の関わり合いの根源の探求のために、ヒトのはじまりと音楽のはじまりについて、最近の研究動向と合わせて、基本的な知識から最先端の知見までお話いただいた。紀元前35000年から40000年前に存在した人類最古の楽器である鳥の骨のフルートから2009年に行われたオウムのリズム認知能力の実験についてまで幅広い音楽神経科学についての内容であった。ヒトが道具を使用し、言語を獲得してきた中で音楽の獲得も紀元前35000年前からあった可能性が高いことを示され、言語や社会性と音楽とリズムの関係性をヒトの脳の発達を踏まえながら理解を深めた。乳児の身体可聴化技術を用いてヒトと音楽の根源を探求することができる可能性を今後の研究として示唆された。

続いて、慶應義塾大学環境情報学部奥絢介から乳児の身体運動可聴化技術についての報告であった。そのヒトの身体の動きを音へと変換する身体運動の可聴化技術への取り組みは近年急速に発展しており、スウェーデンで開発されたFreedrumと呼ばれるデバイスは、成人用のエアドラムキットで、スティックの角速度や角加速度をMIDI信号処理してドラム音に変換し、身体運動を可聴化できることについて説明をいただいた。そして乳児の四肢運動をリアルタイムで音としてフィードバックする技術をFreedrumで応用できるかは不明であると言うことだった。セミナーでは、成人用エアドラムデバイスのFreedrumを用いて、乳児の身体運動可聴化が可能かを検証した過程を報告した。乳児の四肢運動に適した閾値のプログラミングや、リアルタイムでフィードバックする音選びについて技術面の方向から乳児の身体運動可聴化技術の可能性を示された。

最後にこの乳児の身体運動可聴化技術を用いて乳児の音遊び行動の研究の進捗状況を報告された。生後三ヶ月程度の乳児の両手両足にFreedrumを装着し、乳児の音遊び行動を心拍の生理指標とFreedrumで計測した四肢運動のデータを元に解析された。実験では2分(音無し)―8分(音有り)―2分(音無し)―2分(音あり)のといった時間間隔で実施した。解析結果として機嫌の良かった乳児は2回目の音無しで比較的多く手足を動かすことがわかり、乳児が動きと音の随伴関係に気がついている可能性があると示された。また心電図からは2回目の音あり時期に心拍数が上昇していることがわかった。心拍の生理指標からは乳児それぞれの特性が見られ、また共通項もいくつか見ることができた。その後参加者とともに、乳児の四肢運動、音楽を捉える脳のメカニズム、音楽と心拍の関係性などについて議論した。

報告: 奥絢介(慶應義塾大学環境情報学部 学部生)

参加者の声

音によって自発運動が増えるならば、自発運動の少ない児の運動発達の評価や、リハビリにも応用していけそうだという期待を持ちました。
今まで聴いたことのない内容で、とても面白そうな研究だと思いました。赤ちゃんとてもかわいかったです。
しばしば周囲からリズム感がないと言われますが、幼児期のこういった音の中での行動においても音楽に対する好みが見られたら面白いと思った。
最先端の研究の過程を詳しく聞くことができてよかった。大変興味が持てた。
赤ちゃんが目に見えて音を楽しんでいる様子だったので、この研究が進んで、いつから楽器や音楽を楽しむようになるのか、楽しんで身体をうごかすのはどういうことなのか、これから楽しみです。ありがとうございました。

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